サイトTOP » 安全な観測のための三箇条
このページで紹介している2012年5月21日の金環食は既に終了しています。日本での次回の金環食は2030年(北海道)、皆既日食は2035年(北陸~北関東)、部分日食だと2016年(全国)です。
太陽光の危険性を甘くみない!絶対に守って欲しい3つの約束
太陽の光は非常に強力です。古今東西、天文学者を含め多くの人々が、太陽観測・日食観測を原因とする不可逆的な視覚障害を負ってきました。間違った方法で太陽を見ることは、一生の思い出となるはずの金環食というイベントを、一瞬にして忌まわしき出来事に変えてしまいます。取り返しの付かない事故を未然に防ぐべく、最大の注意を払いましょう。詳しい説明は専門家の方のサイトに譲りますが、以下、絶対に守って欲しい安全のための三箇条を挙げておきます。小さなお子様がいるご家庭の方は勿論ですが、大人の方も十分にお気を付け下さい。
第一条:絶対に太陽の生の光を目に入れない
日食グラス(日食メガネ)などのフィルターを通さず、太陽の光を直接見ることは、どんな場合でも絶対に禁止です。人間の目はカメラのようにレンズ(水晶体)で光を集めてフィルム(網膜)に焦点を結びます。太陽を直接見ることは虫眼鏡で紙を焦がすのと原理的に変わりありません。まぶしさをこらえて太陽を見続けると、網膜の細胞が光で破壊されてしまいます。そもそも失明覚悟で無理に見たところで、太陽の隠れていない部分が明るすぎ、欠けている形は分かりません。
もちろん、望遠鏡や双眼鏡で太陽を直接覗けば、一瞬にして目に完治しない傷害を負ってしまう危険性さえあります。さすがにそんなことをする大人はいないでしょうが、子供は予想外の行動を取るときがあります。あらかじめ虫眼鏡で紙を焦がすところを見せておくなどして、太陽の光の強さと怖さを十分に伝えておきましょう。かつて望遠鏡の接眼部に取り付けるタイプの太陽観測フィルターがよく売られていましたが、熱でフィルターが破損する事故が多発し、今では取り扱われなくなりました。それほどまでに太陽の光は強烈なのです。
仮に当日薄曇りで、直接太陽の輪郭が見れそうだったとしても、やはり道具なしに見てはいけません。非常に危険です。
第二条:太陽観測専用のフィルターを選ぶ・正しく使う
地上に届く太陽の光には、可視光の他にも、熱線(赤外線)、紫外線などの目に見えない光が混ざっており、そのいずれもが直接目に入れるには極めて有害な強さです。
かつて良く使われたロウソクのススを付けたガラス板や、黒いプラスチックの下敷き、カラーフィルムの切れ端、お菓子の袋やCDやDVDなどのアルミ蒸着されたフィルム・プラスチック、写真撮影用のND(減光)フィルター、サングラスを数枚重ね、などの方法は、可視光は十分に減光できても、熱線や紫外線を安全なレベルまで減光できないと言われています。
それよりは安全な方法として、ときに推奨もされている、白黒銀塩フィルムの感光部、溶接用遮光グラスなどについても、太陽観測を目的に作られていない以上、安易に使用すべきではありません。
通常、光学機器メーカーの日食グラス・太陽観測フィルターは、目に見えない光の通過率まで考えて作られています。その他のオリジナルブランドの日食グラスでも、JISやその他の規格で「遮光保護具」として合格しているものであれば、ひとまずは安心と言えます。国内の天文団体からお墨付きを受けたことがある製品はビクセンの日食グラスぐらいのものですが、国内の業者が「太陽観測用」「日食用」として販売している観測グッズ(含輸入品)であれば、全てPL法が適用され、万一の時には損害賠償を請求できます。
そもそも代替品より専用品の方が使いやすいですし、価格もむしろ安いです。仮に日食グラスが品切れになっていたとしても、無理に代替品を買うのではなく、ピンホール投影法など、より安全なその他の観測方法を第一に考えましょう。
また、折角買ったフィルターも、間違った使い方をしては意味がありません。例えば、裸眼で太陽の位置を確認してから日食グラスを目の前にかざすような使い方は危険です。必ず日食グラスで目を完全に覆ってから太陽の方向に目を向けてください。そして、日食グラスをかけて双眼鏡を覗く等の行為は、絶対に止めましょう。通常より眩しくなる上に、フィルターが焼け落ちる危険性もあります。もちろん保障も受けられません。
なお、日食観測グッズを通販で買うときには、粗悪品や偽物にも注意してください。大手の日食グラスのつもりで買ったのに、ものすごく暗くしか見えない粗悪品が届いたという報告も寄せられています。くれぐれも安さだけに気を取られず、他のユーザーの評価が高い製品・ショップを選びましょう。
ちゃんと見えるかどうか、当日前にチェックしておくことも重要です。とくに人の目は、多少の眩しさにはすぐに慣れてしまいますので、最初に使ったとき少しでも眩しさを感じたら、たとえ規格をパスしている商品でも使ってはいけません。事故の元です。
第三条:どんなに安全な方法でも連続して長時間見ない
いくら良くできたフィルターでも有害な光を100%防ぐことはできません。日食グラスで十分に減光された太陽でも何十分も連続して見るようなことはせず、最大でも1分程度の間隔で休み休み観測することを心がけましょう。事実、多くの日食グラスは2~3分以上連続して観測することを説明書で禁じています。
非常に安全とされているピンホール投影法や望遠鏡による投影法で観測する場合でも、光る物体を見続けること自体がそもそも目に優しくありません。目の前の太陽に集中しすぎると、周囲の危険に気づくのも遅れますので、やはり休み休みの観測が肝心です。
そして肌の日焼けでもそうですが、目に少しでも痛みや異常を感じた時点で目は既にかなりのダメージを負っています。万一目に違和感を覚えたら、速やかに眼科医の診察を受けて下さい。日食によるダメージは、半日~数日経ってから感じることも多いそうなので、要注意です。
参考:日食観測の安全に関する情報ソース
以下、安全な日食観察を考える上で、参考になる情報をご紹介しておきます。なお、今回の日食を通勤途中・登校途中に見る方も大変多いものと思います。目の安全だけでなく、交通事故や転落事故にも十分お気をつけください。
- 危険回避のために | 世界天文年2009 日食観察ガイド
世界天文年2009日本委員会による、日食観測で注意すべき事項がまとめられたページです。 - 日食を観察する方法 | 国立天文台
国立天文台による上記同様のコンテンツです。 - 日食の安全な観察推進ワーキンググループ | 天文教育普及研究会
天文教育普及研究会による2009年の日食時の視覚障害発生の報告や、各種観測法の安全性の検証結果をまとめたコンテンツです。各社の日食グラスをはじめ、代替品の安全性を実際にチェックしてみたレポートも掲載されています。 - 動画で見る!安全な日食の観察方法 | ビクセン
光学機器メーカーのビクセンによる安全な観測のための解説VTRです。とても分かりやすいので子供への説明にも良さそうです。