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このページで紹介している2012年5月21日の金環食は既に終了しています。日本での次回の金環食は2030年(北海道)、皆既日食は2035年(北陸~北関東)、部分日食だと2016年(全国)です。
主な観測方法と長所・短所を簡単に説明しておきます
金環食は皆既日食とは異なり、一番欠けた時でも道具無しに直接目で見ることはできません。太陽の光は非常に強力で、誤った方法・不適切な道具を使って観測すると目に不可逆的な傷害を負う危険性があります。リング状に欠けた太陽を楽しむためには、それ相応の準備が必要です。
以下、代表的な観測方法それぞれの長所、短所、機材の選び方などについて、一通り簡単にご説明しておきます。準備はどうぞお早めに。
なお、それぞれの観測方法や個々の商品について、当サイトではその安全性までお約束するものではありません。ご利用はあくまで自己責任でお願いします。
※当サイト管理人のブログ記事「日食グラスを実際に何種類か比較してみたのでレビューしておきます」も是非ご参考下さい。
1.日食グラス(日食メガネ)
太陽光を一万数千~数万分の一のレベルにまで減光し、安全に見られるようにするフィルターです。初心者でも扱いやすく、見やすく、何より太陽の実像を見ている満足感があります。
良くできた製品はベイリービーズ(金環食直前・直後に月の谷間から太陽の光が数珠状に漏れ出る現象)を確認できる可能性がありますし、通常時の太陽観測でも数年に数回は巨大な黒点を確認できます。6月6日にある金星の太陽面通過についても、日食グラスで見るのは難しいだろうという話もある一方、2004年の時にはハッキリ見えたという報告が多数あります。
ただしフィルターを通しているとはいえ、太陽を直接見る以上、目に見えない紫外線や赤外線も、十分安全なレベルまで減光できるフィルターを選ばなければなりません。
過去に国内の天文団体などからハッキリ名指しで推奨されたことのある製品は、ビクセンの日食グラスくらいしかありません。これは1500円前後とやや値の張る商品ですが、小さな子供の利用を考えればベストな選択と言えるでしょう。高いだけあって像もシャープ、色調もナチュラルで、とても良く見えます。また、ケンコーをはじめ、日本の光学機器メーカーの日食グラスなら、同等の安全性&安定性が確保されているものと思われます。
より安価なものとしては、JISや海外の規格で「遮光保護具」としての規格にパスした商品が、一枚500円前後で市場に数多く出回っています。例えば当サイト管理人はこちらの業者さんの「太陽日食」メガネという商品を家族分購入しています。
いちおう、国内の会社が「太陽観測用」「日食用」として製造・輸入販売している製品は全てPL法の対象になりますが、さすがに何の規格も取得していない製品は、ネット上で評判を十分に調べてから購入した方が無難です。
また、通販で買うときには、粗悪品や偽物にも注意してください。安価だが実績のある会社の製品だからと安心して注文したら、ものすごく暗くしか見えない粗悪品が届いたという報告も寄せられています。くれぐれも安さだけに気を取られず、他のユーザーの評価が高い製品・ショップを選びましょう。
もちろん、ちゃんと見えるかどうか、当日前にチェックしておくことも重要です。とくに人の目は、多少の眩しさにはすぐに慣れてしまいますので、最初に使ったとき、少しでも眩しさを感じたら、たとえ規格をパスしている商品でも使ってはいけません。事故の元です。
なお、日食グラスの自作や代替品の利用は止めておきましょう。2009年の皆既日食では、個人のホームページを中心に様々な自作法・代替法が紹介されましたが、大量生産するのでも無い限り、安全性まで考えると結局は日食グラスを買うより高く付きます。その上、万一の事故のとき、だれも補償してくれません。
使ってはいけない日食グラスがあります
消費者庁から「不適切な日食グラス」について製品名の発表がありました。当該の製品の販売個数は41個で販売業者が回収対応中とのことです。http://www.caa.go.jp/safety/pdf/120518kouhyou_2.pdf(pdfファイル)
2.ピンホール投影法
薄い板に針で穴を開け、ピンホールカメラの要領で太陽像を壁や地面に投影して観察する方法です。紙と針があればすぐに出来る手軽さと、目を痛める危険性が少ないのが魅力ですが、ピンホールで映し出される太陽の大きさは投影面への距離10cmあたり直径1mm弱。開けた穴より細かいものを映し出すこともできず、いかんせん、非常に小さく、ぼやけた像にしか見えないのが難点です。
そこで少しでも大きく、シャープな像を見る方法として、段ボール箱を暗箱&スクリーンとして使う「ピンホールボックス」という観測方法があります。金星の太陽面通過の観測まで考えるとかなり大きなものを作らないとなりませんが、金環食を見る分には長さ1mほどの箱で直径1cm弱、30cm程度の箱でも直径3mm弱と、身近な大きさの段ボール箱で、十分見応えのある太陽像を結びます。様々な天文団体がこの観測法を推奨しています。
ピンホールボックスの作り方
1.大きめの段ボール箱を用意して片側を少しくりぬく。はさみを刺してぐりぐり回せばOK。
2.くり抜いた穴にアルミホイルや不透明なテープを貼って目隠しをして、そこに針や画鋲で穴を開ける。
3.明るく見えるように、光が投影される部分に白い紙を貼って、ひとまず完成!
4.あとは像のぼやけ具合と明るさのバランスを見ながら、穴の大きさを少しずつ調整。穴が大きくなりすぎたら「2」からやり直します。
大人なら慣れれば3分もかからずに作れるようになります。大人が付いていれば小学校低学年くらいの子供でも簡単に作れるでしょう。ただ、刃物の取り扱いには十分注意してください。
3.望遠鏡を使った観測方法
日食を肉眼より大きく見たい場合には望遠鏡と太陽専用の機器を組み合わせて観測する必要があります。当サイトで説明するには少々専門的なので、ざっと概要だけまとめておきます。
天体望遠鏡+太陽投影板による投影法
天体望遠鏡を使って白色の板に太陽像を投影する方法です。きちんとセッティングすればビギナー用の小口径の望遠鏡でも直径数センチ~十数センチもの大きさに太陽を投影することができ、小さな黒点までハッキリと観察できます。大勢で大きな太陽を同時に見たい場合、これに優る方法はありません。天文ファンにとってはポピュラーな観測方法ですので、観望会に行けばお目にかかれるかもしれません。
減光フィルター+望遠鏡・双眼鏡による観測
望遠鏡や双眼鏡に太陽観測専用のフィルターをかぶせて観察する方法です。一番見応えのある観測方法で、ベイリービーズも確認しやすいですが、正しい知識で機材を使用しないと重大な事故を起こす危険性があります。天体観測初心者の方にはあまりオススメできません。
例外として、低倍率ではありますが、太陽観察用オペラグラスという安価な商品も登場しています。試用してみたところ確かに肉眼よりずっと大きく(公称3倍)見応えのある太陽が楽しめました。→結局、2個も買ってしまいました。日食グラスだとあるかないかギリギリ分からなかった大きめの黒点が、この製品ではハッキリ見えましたので、金星の太陽面通過も十分観測できるでしょう。ベイリービーズの確認も等倍で見るよりは期待できます。
なお、ご家庭の双眼鏡や望遠鏡と日食グラスを組み合わせて使うのは、絶対に止めてください。日食グラスのフィルターは、そういった使用法を想定して作られていません。
望遠レンズ・望遠鏡+CCDカメラによるライブビュー
太陽観測専用のフィルターをかぶせた望遠レンズや望遠鏡にCCDカメラを取り付け、テレビモニターに映し出す方法です。家庭用のビデオカメラでも、フィルターの取り付けが可能で、光学10倍程度の高倍率ズームがあり、手動露出補正の範囲が広いものであれば、丸い太陽をクッキリ映し出せる可能性があります。フィルターについても、日食グラスのフィルター部を切り出してレンズ前面を覆えば、それで代用できる場合もあります。
大勢で見ること、記録に残すこと、目の安全などを考えれば最高の観測方法ですが、実質的にテレビの生中継を見るのと大差なく、自分の目で見ている実感に乏しいのが難点です。また、自動追尾のことまで考えると、機材はかなり高額になります。あくまで観測会向けの方法といえます。
なお、さすがに携帯電話やスマートフォンのカメラで日食の詳細な様子を画面に映し出すのは無理がありますが(太陽の見かけの大きさは意外と小さく腕を伸ばした先の5円玉の穴にすっぽり入る大きさしかありません)、管理人はこのような安価な工夫で、太陽のハッキリとした輪郭をスマートフォンで撮影することに成功しています。外部モニター出力のある携帯電話やスマートフォンがあれば、こうした方法でライブビューやネット配信が手軽に実現出来るかもしれません。どうぞご参考下さい。