サイトTOP » 金環食観測・準備のポイント
このページで紹介している2012年5月21日の金環食は既に終了しています。日本での次回の金環食は2030年(北海道)、皆既日食は2035年(北陸~北関東)、部分日食だと2016年(全国)です。
金環食観測成功のためのポイント
全国的に見える日食とはいえ、何の準備もなしに当日を迎えれば折角のチャンスも無駄になるというもの。金環食前日までに押さえておきたい日食観測成功のポイントを、ざっとご紹介しておきます。
- 日食グラスは売り切れる前に今すぐ入手!
- 均等なリングを長時間見たければ、少しでも「中心食線」の近くへ!
- 当日は早起きを。天候に合わせ大移動のつもりで。
- ほぼ完全に東の空が開けた場所を前日までに探しておこう!
- トイレに日焼けに虫さされ・・・アウトドア目線での準備を
- 日食ツアーや観測会に申し込んだからOK…の油断は禁物
- 日食関連おすすめサイト
1.日食グラスは売り切れる前に今すぐ入手!
金環食は皆既日食とは異なり、日食グラスなどの観測グッズがないと見ることができません。目の安全のためというだけでなく、そもそも太陽の隠れていない部分が明るすぎるので、失明覚悟で無理に見たところで欠けている形は分かりません。
今回の日食は早朝に起きますし、2009年の皆既日食での例から考えると、当日になってからの日食グラスの入手は困難になると予想されます。なるべく早めに必要な分を確保しておきましょう。
万一天候の問題で日食が見られなかったとしても決して無駄にはなりません。日食グラスでも見える大きな黒点が、数年に数回は現れます。また、6月6日にはよりレアな天文現象である金星の日面通過があり、過去の例では日食グラスでも十分見えたという報告があります。
2012年5月19日現在、日食グラスは原価割れ・売り切りセールの様相を呈している一方、品薄となった地区では高騰しはじめていますので、お店で見かけたらすぐにその場で購入してしまうことを強くお勧めします。また、通販ではもう間に合いませんので、ネットでの注文は止めておきましょう。
そして、観測グッズを購入したら、すぐに“予行演習”をしておいて下さい。直前になって不良品や粗悪品に気づいても手遅れですし、天体望遠鏡の類は初心者のうちは操作が思うようにいかないものです。
観測グッズについて詳しくは観測グッズと選び方のページもご参考下さい。
日食グラスを扱っている主な場所
・写真店・写真用品店
・家電用品店
・大手スーパー・デパート
・ホームセンター
・文房具店
・書店(日食グラス付き書籍などもある)
・コンビニ(同上)
・ネット通販
2.均等なリングを長時間見たければ、少しでも「中心食線」の近くへ!
今回の日食では「金環食帯」(下の地図でオレンジ色の線に囲まれた範囲)にさえ入っていればリング状の太陽を見ることができますが、見え方は場所によって様々です。
リングの継続時間が5分以上&厚みが均等な真円のリングが観測できる場所もあれば、わずかな時間片方が切れかかったリングしか見られない場所もあります。
もしどうしても完全に均等なリングが見たい場合は「中心食線」(地図上の赤い線)付近のエリアで観測する必要があります。
幸いにも今回の日食の中心食線は、日本列島の太平洋岸の多くの都市、たとえば政令指定都市では静岡市、横浜市、川崎市、東京の上を通ります。
»中心食線が通る市区町村の一覧
これらの都市や、浜松市、千葉市など中心食線近隣の都市は、金環食の継続時間が5分にも及びます。
また、金環食帯の限界線(地図上でオレンジ色の線)と中心食線の中間付近に位置する鹿児島市、宮崎市、津市、甲府市、水戸市などでも、真円にこそなりませんが比較的偏りの少ないリングを見ることができます。金環状態の継続時間も4分程度と長めです。日食グラスで見える太陽はとても小さなものなので(腕を伸ばした指先の5円玉の穴にすっぽり入るほど)、リングの厚みが倍ぐらい違っても気にならない人も多いことでしょう。
一方、神戸や京都など金環食帯の限界線付近にある都市は、日食の最大時でも偏りの大きいリングにしかならず、金環状態の継続時間もかなり短くなります。こうした場所にお住まいの方は、10kmでも、5kmでも、それこそ1kmでも構いません。どうせ外縁部だからと諦めてしまわずに、少しでも中心食線に近いところでの観測を計画して下さい。外縁部になればなるほど、わずか数kmの差がリングの見え方や金環状態の継続時間に大きな違いを生みます(とはいえ、不完全かつ一瞬のリングにこそ美を感じる方も少なくはないでしょう)。
なお、本当に限界線すれすれの地点で観測する場合には、予測図の計算誤差のことも考えなければなりません。国立天文台、NASA、その他様々な機関・団体が予測を発表していますが、それぞれの値には数百m~数kmの差があります。当サイトの予測図はNASA発表のデータを利用して計算されているものですが、当サイト管理人がおそらく今回の日食で最も精密な予測だと思うこちらの情報と比べると、3km弱、外側にズレています。金環食帯の限界線付近にお住まいの方には、念のため当サイトの予測図から3km以上中心食線方向に移動して観測することをお勧めしておきます。
各地の詳しい見え方は各地の見え方・観測会のページで確認できます。
3.当日は早起きを。天候に合わせ大移動のつもりで。
せっかくの金環食も曇っていれば見ることができません。皆既日食のように空が真っ暗にもなりませんので、普段と変わり映えのない普通の朝に終わってしまいます。
今回の金環食の開始は朝7時半頃であり、早起きをして始発に飛び乗れば公共の交通機関でもかなりの移動が可能な時間ではあります。例えば東京駅を起点に考えると、在来線でも西は御殿場、東は日立、南は三浦半島および房総の君津・金谷付近、北は前橋・宇都宮あたりまで、最大100km程度は移動できます。
また、金環食が終了してから会社や学校の始業時間まで1時間くらいの余裕があります。多少遠くに出かけても会社や学校に遅刻せず出勤・通学できる望みもあるわけです。なるべく早起きをして、曇天脱出を計りましょう!
もちろん、お仕事や学校を無理なく休める方は、前日の天気予報次第で国内を大移動できれば最高です。5月末は沖縄を除いて梅雨入り前ですから、どこかに晴れの地域はあるはずです。
4.東の空が開けた場所を前日までに探しておこう!
今回の日食は最大食が朝7時半頃ということもあり、太陽がそれほど高くまで昇りません。
最大食時の太陽高度は鹿児島近辺で25度程度、関東近辺でも35度程度なので、東の空がほぼ完全に開けた場所で観測する必要があります。都心や山岳地帯、森林地帯などでは太陽が物陰に隠れてしまう場所が多いと思われます。
当日になってからの場所探しはあっという間に時間が過ぎます。特に都市部は人に迷惑をかけないで観測できる場所も限られていますので、前日までに現地を歩いて、観測場所の目星を付けておいた方が良いでしょう。当日遠征組も、都心で観測する場合は広い公園など、なるべく人が少ない公共スペースを利用するつもりで計画を立てておいて下さい。
観測会など大勢で観測する場合は、その場所の占有許可を取っておく必要があることもお忘れなく。
5.トイレに日焼けに虫さされ・・・アウトドア目線での準備を
今回の日食は金環食だけならせいぜい5分程度で終わりますが、部分食の開始から終わりまでずっと観測するなら2時間半もの長丁場となります。どれほど見晴らしが良い場所でも、トイレが無いところは観測地には不向きです。
また、途中で体調を崩さないよう、飲み物、椅子、日傘や帽子などの日除け、日焼け止め、虫除けなど…たとえ都心で観測する場合でもアウトドア目線での準備を心がけて下さい。
6.観測会や日食ツアーに申し込んだからOK…の油断は禁物
「観測会に行くから何も用意しなくても大丈夫でしょう?」「日食ツアーに申し込んだからもう準備は万全!」・・・いいえ、残念ながらそうとも言えません。
天文台など専門的な組織・団体が主催する日食観測会でさえ用意している望遠鏡や観測グッズには限りがあるものです。小規模な観測会だと望遠鏡での投影がCCD+TVモニターだけと味気ないものになるケースも珍しくありません。今回の金環食ではただでさえ、天体観測会の開催経験が無い団体や、スタッフの中にアマチュア天文ファンさえいない団体が開催する観測会も多いものと予想されますので、全てのイベントに至れり尽くせりを期待するのは無理があります。
観測会やツアーは大勢で集うことそれ自体を楽しむものと考え、安価なものでも日食グラスの準備くらいは自分でしておきましょう。
日食関連おすすめサイト
以下、当サイト管理人オススメの日食関連の情報サイトをまとめておきます。なお、安全な日食観測ための情報源についてはこちらのページにもまとめてありますのでご参考下さい。
- 2012年5月21日 金環日食(国立天文台)
国内における公式情報源といえばまずここです。配付用に使える資料も各種用意されています。 - Annular Solar Eclipse of 2012 May 20 - NASA
NASAの今回の金環食に関する一般向けWebサイトです。世界標準時での表示となりますが、各国・各地の金環食情報を地図上でクリック表示できます。当サイトの日食データはこちらと同じ計算方法を利用しています(全く同じというわけではありません)。 - 2012年 金環日食日本委員会
国内天文関係団体・関係者の合同組織「日本天文協議会」の、今回の日食に関するワーキンググループです。マスメディアや教育関係者向けの様々な情報が網羅されています。 - 2012年5月21日☆金環日食を楽しもう(日本天文愛好者連絡会さん)
今回の金環食に関する有用な情報ソースへのリンク集ページです - 2012年5月21日金環日食観望会情報 (天文教育普及研究会さん)
当サイト同様、各地の観測会・日食イベント情報の一覧を掲載しているコンテンツです。やはり当サイト同様、掲載も無料です。 - 2012年金環日食気象観測発表会(日食観測学習連絡会さん)
生徒・児童さんへの日食学習指導のための各種資料が配付されています。また小中学校を対象に全国的な共同観測を呼びかけており、そのエントリーを受け付けています。 - みんなで日食マップを作ろう(2012年5月21日金環日食限界線プロジェクトさん)
今回の日食がどう見えたかみんなの報告を集め、日食メガネによる金環食の限界線を知ろうというプロジェクトです。皆さんの投稿が次回の日食時の啓蒙活動に活かされます。 - 日食ナビ
今回の金環食に限らず、様々な日食の予測データが掲載されている情報サイトです。 - アストロアーツ「金環日食2012」特設サイト
天文情報誌「星ナビ」や、天文情報サイト「AstroArts」を運営しているアストロアーツさんによる情報サイトです。 - 天文ガイド
老舗の天文情報誌「天文ガイド」のホームページです。
以上、まだまだ追加して参ります!!